酒井法子保釈会見

保釈後、すぐに会見をやるという話を知ったのは数日前。びっくりした。
そんなことまでしなきゃいけないんだ。公判後とか、ほとぼりが冷めてから、とかじゃなくて、こんなにタイムリーに。

失踪(実際は逃亡)→逮捕状→出頭→供述、という一連のくだりはあまりにもセンセーショナルで、私もけっこう報道を見てたけど、もう自分の中では、ちょっと前には、あらかた終わった事件になってた。これ以上見てもしょうがないって感じ。

当面、仕事や人間関係を失うという、まっとうな道を踏み外してしまった社会人として当然の報い。
加えて、両親や生育環境など、本人には直接責任のないようなことや、“秘部にタトゥーが”とか“シャブセックス”みたいな、どこまでが本当かわからないようなことまでマスコミに騒ぎ立てられるという、芸能人だからこその社会的制裁も受けてるわけで、このあとは公判で法に基づく刑罰も課されるのだし、もうじゅうぶんじゃないかって気もする。

公判も終わってない、子どもとも会っていない、保釈ホヤホヤのタイミングで会見だなんて、どこまで晒し者にするんだろう。そこまで、興味本位に消費されなきゃいけないんだろうか・・・・と思った。

とはいえ、一応、会見はテレビで見たんですけどね、わたくし。フルカットではありませんが。

すると、ちょっと気持ちが変わった。
ペンの権力をかさに着たマスコミたちが、ここぞとばかりに破廉恥で強圧的な、見てるこっちが不快になるほどの勢いで質問を浴びせかけるんだろうと思っていたが、公判前にいろいろ喋るわけにはいかないとかで、質疑応答は無し。元所属事務所と、元所属レコード会社(になるのかな?)の重鎮に付き添われたのりピー。本人が述べる反省の言は、もちろん弁護士か誰かにもあらかじめ原稿を見てもらったのだろうし、切々とした語り口も、ともすれば「まあ、女優だしね。。。」なんて思ってしまうところもあり。

そう、どこか、「きちんと整えられた映像」のように見えてしまったのだ。目立たないカチューシャをしたサラサラの髪、薄いメイク、ぽろぽろと大粒の涙を流す姿。
それは、かつてのキラキラしたアイドル(あるいはママドル)の姿を知っている私たちが目を背けたくなるほど憔悴しきっているわけではなく、むしろ、「やっぱりのりピーだねえ。芸能人だねえ・・・」と、思わずほうっ、と息が出るくらいに、じゅうぶんきれいだった。
何もかもを失い、そしてこれからも失ったまま生きていく落伍者として、身も世もなく打ちひしがれているようには見えなかった。あくまで、芸能人として、テレビの向こうにいる無数の視聴者を意識しながら、のりピーはあの会見に臨んだのではないかと思う。それぐらいにはしっかりしてる感じだった。長いこと芸能界でやってきた人って、あれぐらい強い・・・というかしたたかなのか、あるいは彼女自身がそういう特性をもった人間なのかは良く分からんし、まあどっちでもいい。私、個人的に彼女のファンってわけでもないんで。

ファンでもないかわりに、別に嫌いでもないので、然るべき罰、報いを受けたあとののりピーには、息子さんもいることだし頑張ってほしいなーと自然に思ってるのだが、あんなにある意味「きれいな姿で」出てきたのりピーの会見って、どうなんだろう。

クスリに手を出してる人、あるいは将来クスリに手を出しかねない人って、プロのマル暴さんの幹部とかを除けば、大半が若者だったり、そうでなくてもモノの分別もついてない人なわけで、そういう人たちに、普通に「クスリはダメ!」「危ないんだよ!」とか言っても、普通、無駄でしょ? 「仕事も友だちも失うよ」とかいっても、そもそも仕事とかする気ない人だったり、友だちみんなで薬物してたりだったら、意味ないし。

やっぱり、「心身ともにボロボロになるんだよ!」て言わないといけない。「痩せる」わけじゃなくて、「痩せこける」んだから。しゃれこうべみたいに気持ち悪い顔貌になる、歯も全部溶ける、当然、マトモにモテたりしない。排泄のコントロールもできなくなって垂れ流しになる。それでももう自分の意思なんてものはなくなってしまうので、どうにもやめられなくて、クスリ欲しさのあまりに売人の奴隷と課して犯罪に手を染めたり、あるいは外国に売られたり。家族のためとか社会のためとかじゃなくて、まず、自分自身がそういう悲惨すぎる道から逃れられなくなるっていうふうに、正しく具体的に言わないといけない。

もちろん、更正して社会復帰してる人もいるだろうし、そういう人を支援していくのも社会の役割だろうけど、薬物を撲滅するべく、はたらきかけるのも社会の役割だ。そういう意味で、あの会見は、どうなのかと思った。あれぐらいきれいな姿で、しかも、育ての親みたいな人に保護されるんだったら、クスリなんて大して怖くないやん、て思われても仕方ないような・・・・。

クスリって、いかに日本社会にはびこっているとかいっても、大半の市民には、一生、縁のないものだ。「あんなものやるなんて身の破滅だ」と普通に思っている人がほとんど。だからこそ、
「自分や自分の周囲には関係ない」
「ラリって暴行とか起こさない限り、自分自身に直接の被害はないし」
と思いがちだったりする。

確かにそうかもしれないけど、考えの足りないバカちんが薬物を買ったお金って、ほとんどが、マル暴さんを通じて海外に流れていく。そしてそのお金で、銃器や爆弾が調達されたり、家族に渡すお金欲しさに自爆テロをする兵士が雇われたりする。もちろん、それだけじゃなく、たとえばパチンコとか、合法的に使われるお金だって、そういうルートを辿るものもあるんだろうけど・・・。日本でだって、薬物を買うには高い代価が必要だ。それが海外の途上国なんかに流れたら、どれだけの価値になるか。

そういうお金が、戦争や紛争に使われて、たくさんの人たちが犠牲になっている・・・と思うと、やっぱり、関係ないの一言で済ませられない気がするじゃないですか。自己責任なんて言葉は、パッと見、厳しいようで、実はかえって生ぬるい。薬物を撲滅するなんて、実際には不可能だ。と悟ったようなふりするのだって、ある意味、逃避だ。

やっぱり社会全体が、薬物に対してはガンとした態度でいなきゃいけないと思うわけで、そのためには、今の時点であんなきれいなのりピーを見せて欲しくはなかった。だからといって、ボロボロののりピーが見たかったわけじゃないよ。会見なんて要らなかったんだよお、結局。