『村田エフェンディ滞土録』(梨木香歩 角川文庫)。

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫)

休みの間には本や映像との至福のときもありました。

相変わらず本はいつも傍らにあるけど、あわただしい日常では、どうしてもエッセイとか、気軽な読み物を選びがちなもの。

「終わるのがもったいないからゆっくり読みたい」という気持ちと戦いつつも、どんどん読み進んでいった。
そしてラストも圧巻。感動とかいう言葉じゃ薄っぺらいくらい、読み終わったあとに「万感の思い」みたいなのがこみあげてくる読書は久々だった気がする。

「春になったら苺を摘みに」や、「家守綺譚」、「からくりからくさ」でも思ったけど、梨木香歩という人、こういう人を、真の国際人、歴史家というんじゃないかと思う。言葉選びや文章も本当に知的で、品性高い。理性的で、ウェットではないのに、人間に対してすごく温かい目線なのも素敵。読書の喜びというのをここまで感じさせてくれる作家は、そう多くない。次の作品が楽しみだ。

蛇足だけど、この作品と同じく、昭和初期を舞台にした「蒲公英草紙」(恩田陸)を最近読んだので、そのレベルの違いを感じずにはいられなかった・・・。

再読では、やはりオリンピック開催中なので、村上春樹の「シドニー!」がことさら面白く感じられ、その流れで続けて読んだ「走ることについて語るときに僕の語ること」も、市民ランナーの端くれとして、うなずくところが多かった。